スケールの平準化:OneSteelのラバートン・ロッドミル

OneSteelは、建設業、製造業、住宅、鉱業、農業といった分野の約3万社の顧客に向けて4万点以上の製品を製造販売しています。同社はオーストラリア全土に展開する工場で、大口径のビームから極細のスチールワイヤーにいたるまで幅広い製品を製造しています。OneSteelは、その工場の1つでロッド生産の際に出る「スケール」の量に大幅なばらつきがあることを発見しました。スケールとは加工中に熱い鋼の表面が空気中の酸素と反応して形成される酸化鉄です。スケールは、その後の工程に進む前に、高価な機器の摩耗を防ぎ、最終製品の欠陥を避けるため取り除く必要があります。ある程度の量のスケールは仕方がありませんが、過剰なスケールは歩留まりの大幅な損失になります。OneSteelは、ロッドのスケールを許容レベルにまで削減するというタスクをチームに課しました。チームメンバーは、データを分析して、プロジェクトの成功を示すのにMinitab Statistical Softwareを信頼しました。

課題

OneSteelの原料金属は、精製されて最終製品に加工される過程で、さまざまな施設間を移動します。ワイヤーストランドの製造では、同社のラバートン・ロッドミルで赤熱した未加工鋼が薄いロッドに圧延された後に加工されます。ジーロング・ワイヤーミルでは、こうしたロッドをはるかに低い温度で加熱し、その後、特定の直径や機械的特性を持つワイヤーストランドを生成するために金型に通して冷間引き抜きします。

スチールロッドの写真

OneSteelのラバートン・ロッドミルのスチールロッドで計測する「ミルスケール」の量が同社のワイヤーミルの歩留まりや収益性に影響を与えるようになったため、同社はシックスシグマ、およびMinitab Statistical Softwareの力を借りて解決策を見つけ、成功を収めることができました。

ラバートンでロッド製造では、鋼材は最低1038°Cの温度まで加熱され、圧延されます。次に、ロッドは冷却水の箱の中を移動し、ミル内を通過する間に水が表面散布されて冷却されます。さらに、ロッドはレイングヘッドに移され、そこでリング状のパターンに形成されます。こういったリングが移動コンベア上に載せられて追加冷却され、コイルへと集積されます。

ロッドミルで高温処理を行うと「ミルスケール」と呼ばれる酸化鉄がロッドの表面に生成されます。スケールのレベルは使っている圧延機の種類、鋼材の温度、加熱継続時間によって異なります。微細スケールの粉塵粒子には研磨性があり、延伸金型の寿命を著しく減少させるとともに、製品品質の低下につながる可能性もあります。したがって、ロッドから適切にスチールワイヤーを製造するためには、最初にスケールを取り除く必要があります。ジーロング・ワイヤーミルは、リバースベンドスケール除去と呼ばれる機械プロセスを使っています。これはロッドを一連のシーブに通過させるものです。ベンディングは、軟鋼を傷つけずにもろいミルスケールを緩めて落とすことができますが、ラバートンのロッドのスケールのレベルは機械的なスケール除去で望まれるレベルをはるかに上回っていることが多く、そのため歩留まりが低下していました。過剰なスケールは、洗浄と廃棄の費用、スケール抽出システムの稼働や維持に関連するコストだけではなく、低稼働率、金型の寿命の低下、潤滑剤使用量の増加、製品品質の低下といった潜在的コストの増加にもつながります。2008年にジーロング・ワイヤーミルでは維持管理、潤滑剤、金型に81万5,000ドルを費やしたことを鑑みれば、OneSteelには入荷ロッドのスケール量を削減することで、大幅にコストを節約できる可能性がありました。

Minitabの貢献

シックスシグマのブラックベルトであるブレット・ペリンとプロセス責任者のシャンティ・アランガラは、チャンピオンのブライアン・オコネルのサポートを受けながら2008年8月にプロジェクトを始動させました。このチームは、ロッドミルとワイヤーミル双方の技術マネージャー、プロセスエンジニア、品質専門家、金属農薬専門家、機器オペレーターなどで構成されていました。

DMAIC(定義、測定、分析、改善、制御)手法を使用して、プロジェクトチームはワイヤー製造プロセス全体を調査し、スケール除去率が95%未満のロッドを欠陥ロッドと定義しました。その後、ラバートンからジーロング・ワイヤーミルに入荷されるロッドをサンプリングしました。

WAB1006のIスケールチャートは、コイルサンプルによるラバートン・ロッドミルから、試験したサンプルの62%が許容できないほど高いスケールレベルであったことを示しています。

OneSteelのプロジェクトチームがラバートンミルからのロッドのスケールを測定し、Minitabでデータを分析したところ、テストしたサンプルの62%に許容できないほどの高レベルのスケールがあることが分かりました。

チームは製品全体(スチールロッドコイル)に対するスケールの重量を測定しました。その結果、テストしたサンプルの62%に1トン当たり7kg以上のスケールがあり、1トン当たり最大3 kgの大幅なばらつきがあることが分かりました。1トン当たりわずか1kgのばらつきは、生産高で7万5,000ドル相当のものとなるため、大幅な歩留まりの損失になります。ジーロング工場では、過剰スケールの推定損失は年間約22万ドルと試算されました。

プロジェクト全体を通じて、チームメンバーは、データ分析にも調査結果の重大性を伝達するのにもMinitabを頼りにしました。たとえば、Minitabの2標本t検定によって異なるグレード間のスチールロッドのスケール重量の差が証明され、ボックスプロットを使用して情報を視覚的に表示されました。

制御化・試験条件下で収集された機械温度データの箱ひげ図は、試験運転で得られたより低い温度を明確に示しています。

制御化・試験条件下で収集された機械温度データの箱ひげ図は、試験運転で得られたより低い温度を明確に示しています。

Minitabの強力な回帰分析によってレイングヘッドの温度とスケール重量の関係が明らかになり、ソフトウェアの散布図ではその関係が視覚的に表示されました。

また、チームはMinitabの確率密度関数を実際のサンプリングデータに適用し、望ましい結果と比較して、ばらつきの削減とスケール重量の減少によって得られる潜在的な節約額を判定しました。

1回目のダイとトンヌ後の線径の折れ線グラフは、試運転(赤)と対照運転(黒)の間のダイ摩耗の差を示しています。
2回目のダイとトンヌ後の線径の折れ線グラフは、試運転(赤)と対照運転(黒)の間のダイ摩耗の差を示しています。

Minitabの強力なグラフィックを使って、プロジェクトの全ユーザーが試運転(赤)と制御運転(黒)の金型摩耗の差異を簡単に確認することができました。

パレート分析ではワイヤー延伸機の遅延の原因となっているロッドグレードが判定されました。「Minitabでは限られたデータ操作で迅速にこれを行えただけでなく、プレゼンテーションで効果的に伝えられる非常に明確なグラフも利用できます」とペリンは語ります。

スチールロッド製造に使用されているフィードの特性を変更するという選択肢はラバートン・ロッドミルにはありませんでした。そこで、チームはロッドスケールの割合削減とワイヤーミルの歩留まり向上のための他の方法を検討しました。ロッドミルで使われている冷却プロセス、ワイヤーミルで使われているスケール除去や延伸のプロセス、双方のミルにおける動作パラメータといった要因をテストする実験も実施しました。

まず、冷却コンベアのパラメータがロッド上のスケール量に及ぼす影響を評価する試験を実施しました。また、ロッドミルのワイヤー延伸ブロックとレイングヘッドの温度も測定しました。Minitabの分析では、冷却コンベアの再成形温度を30%下げると有意の差が出ることが明らかになりました。

次に、延伸手法が歩留まりに及ぼす影響についてもテストしました。制御運転と試験運転の両方について、チームは生産ラインを設定し、新しい金型、各金型用の新しい潤滑剤、スケール除去ユニットの新しいブラシを使って、一定の運転速度を保ちました。試験パラメータを使った運転では、低い温度、クリーンな製品、金型摩耗の減少、視認可能なスケールの減少が見られました。強度試験では、試験製品と制御製品の間に統計学的な差は認められませんでした。

ワイヤー延伸機の金型摩耗を測定したところ、新しいパラメータでは延伸金型の寿命に劇的な影響があることも分かりました。ある試験では、運転開始時に金型から得られたワイヤーの直径は6.22mmでした。制御ロッドを使って15トンのワイヤーを稼働させた後では、金型の直径は6.32mm近くになっていました。試験ロッドを使ったラインの金型摩耗は大幅に少なく、15トン稼働後の直径は6.24mm未満でした。

前後に収集されたデータの分析により、ラバートン・ロッドミルのレイングヘッドの調整手順を改善した場合の影響が明らかになりました。より正確な「適正」温度を試算できれば、ミルではロッド上のスケールのレベルを許容範囲に収めることができます。
前後に収集されたデータの分析により、ラバートン・ロッドミルのレイングヘッドの調整手順を改善した場合の影響が明らかになりました。より正確な「適正」温度を試算できれば、ミルではロッド上のスケールのレベルを許容範囲に収めることができます。

前後に収集されたデータの分析により、ラバートン・ロッドミルのレイングヘッドの調整手順を改善した場合の影響が明らかになりました。より正確な「適正」温度を試算できれば、ミルではロッド上のスケールのレベルを許容範囲に収めることができます。

さまざまな改善を実施した後、チームはMinitabを使って直近の7mmワイヤーの圧延について、スケール重量とレイングヘッド温度の双方を分析しました。Minitabの分析では、ロッドミルは機械的スケール除去に適した、従来よりもはるかに歩留まり損失の低いロッドを生産できることが確認されました。

Minitabを使って、チームは工場で実施した試験の効果を明確に示すコントロール図を作成しました。この図により、プロセス責任者に対して試験の結果を効果的に伝えることができます。

結果

チームの努力により、ラバートン・ロッドミルの冷却プロセスが改善されました。オペレーターはレイングヘッドの温度をより適切に制御できるようになりました。Minitabの分析では、冷却工程の改善でロッドのスケール量が大きく削減されたことが確認されました。

右のMinitabヒストグラムは、ロッドミルの調整手順により推定された「適正」温度での改善がもたらされ、レイングヘッドで報告される温度に近くなることが示されています。これにより、従来の圧延機と比較して実際のレイイング温度が下がりました。このレイイング温度の低下は、ロッドミル顧客向けのミルのスケールの削減によって歩留まり量を削減する際の主な推進要因となるものです。

ラバートンからジーロング・ワイヤーミルへ入荷される新しいロッドは、はるかにクリーンで見た目にも明らかに優れた製品になりました。スケールの削減と歩留まりの増加により、OneSteelは年間約23万5,000ドルを節約するだけでなく、さらに人件費と消耗品を4万ドル節約できると見込んでいます。また、スケールの削減は下流での加工にもメリットを生みます。

OneSteelのプロジェクトチームは改善を確認したところで、DMAICプロセスの制御フェーズに入りました。Minitabの制御チャートを使って、手順や保守維持作業に加えた変更を確保し、この改善を持続しやすくするととモンい、今後何年にもわたって確実に節約を続行できるようにしています。その間、OneSteelのシックスシグマオフィスでは、品質改善やMinitab Statistical Softwareの力を活かして、同社のグローバル事業のあらゆる面で効率と収益性を高めていく新しい方法を模索し続けています。

顧客

OneSteel

 

概要

  • 鉄鋼および鉄鋼完成品の世界的なメーカー・販売業者
  • オーストラリアに本社を置く
  • 収益は74億オーストラリアドル
  • 全世界で1万1,500人以上の従業員

 

課題

ワイヤー製造に使うスチールロッドの「ミルスケール」の削減

 

使用製品

Minitab® Statistical Software

 

結果

  • 年間27万5,000ドル以上の節約
  • 機械摩耗の減少
  • 見た目に明らかな製品改善